平成18年度における研究目的は(1)在宅重症心身障害児を育てる母親及び父親の事例から、育児の力を見出す出来事及びそれに関連する要因を分析する、(2)サポート環境の視点から海外の在宅障害児支援の状況と比較しながら、在宅重症障害児の育児支援につながるケアを考察する、の2点であった。(1)については父親3名、母親5名、計8名の聞き取り調査を行った。子どもの主体を認識し反応を意味づけることが、母親及び父親にとって育児の力を見出す出来事となっており、これには子どもの身体的安定、社会とのつながり、他者からの言葉が関連する要因として挙げられた。さらに父親が育児の力を見出すためには、父親としての役割を果たすこと、仕事と家庭のバランスをとることが関与していた。母親及び父親が、子どもの主体を認識することと、その状況を解釈していく過程を支えることが重要と考えられた. (2)については在宅医療を推進してきた歴史をもつイギリス、ロンドンのホスピス・RICHARD HOUSE、研究・啓発を通じて在宅医療をサポートする事業を展開してきたShared Care Network、財団により組織的に事業を展開してきたBarnard財団を視察・調査した。在宅で医療の必要な児は、Foster Familyと呼ばれる有償ボランティアのサポート家族をもち、その家に滞在し、家族だけが育児の負担を負わないシステムが確立されていた。サポートネットワークを広げ、安全なケアを提供するための研究機関の役割は大きく、その提言は政策に反映されていた。医療・福祉・教育関係のスタッフがチームで児に関わり、看護師は医療ケアの知識・技術の教育的な役割を担っていた。以上より、重症心身障害児の家族が育児の力を見出し、在宅ケアを継続するためには、家族の負担に配慮した環境の整備が重要であり、研究の蓄積及び全国的なネットワークづくりが我が国における課題と考える。
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