平成19年度における研究目的は(1)在宅重症心身障害児のケアに携わっている看護師の意図している、親の育児の力を引き出す援助を明らかにする、(2)サポート環境の視点から海外の在宅障害児支援の状況と比較しながら、在宅重症障害児の育児支援につながるケアを考察する、の2点であった。 (1)については、重症心身障害児施設で短期入所を行なっている施設の看護師5名に聞き取り調査を行った。その結果、在宅生活を継続するためには【親の子どもの反応への理解】と【子ども以外の家族の生活の継続】が必須条件であると看護師は考えていた。さらに親の育児の力を引き出すために意図している支援には、【子どもの安全を守る】【親の考えや方法を尊重する】【子どもの状況の解釈は親に委ねる】【家族全体の中に子どもを位置づける】【子どもの好きなことの実現を長期的目標に据える】が挙げられた。特に【子どもの状況の解釈は親に委ねる】ことは、親の育児の意欲と関係しているため、看護師の姿勢、反応への細やかな観察、情報の入手方法や提示の仕方、親と看護師の関係性等を踏まえて、支援のための要件を更に詳細に分析することが今後の課題である。 (2)については昨年度調査を行なった、イギリスのブリストルのShared Care Network、Barnard財団の実践を考察した。在宅で医療の必要な児は、Foster Familyと呼ばれる有償ボランティアのサポート家族をもち、家族だけが育児の負担を負わないシステムが確立していた。Foster Familyは子どもの原家族、看護師、ソーシャルワーカーともパートナーシップをもつことが求められており、そのための専門的な研修、支援体制が確立されていた。家族が育児の力を見出し、在宅ケアを継続するためには、家族の負担に配慮した体制の整備が重要であり、安心して育児を分担できる体制を早急に実現する基盤の整備が我が国における課題と考える。
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