本研究全体の進行計画において、2006年度の研究スケジュールは今年度予定の調査研究の倫理審査申請、調査の実施、調査結果から本研究で焦点とするSOCEOの概念枠組みの確立、ならびにこれまでの本研究に関連する研究成果の公表であった。 まず、本年度予定の調査研究について名古屋市立大学看護学部の研究倫理審査を受け計画が承認された(ID番号06037-2)。平成19年3月より調査を開始したが、調査対象者への倫理的配慮から調査日程を対象者主体で運営しており、対象者全員への調査が終了できていないため4月以降も継続する予定である。従って、当初の計画であった調査結果から本研究で焦点とするSOCEOの概念枠組み確立については、文献検討から概念の洗い出しを行った段階に留まっている。現時点で抽出した概念は、結婚観、責任感、義務感、役割意識、愛情、罪悪感であった。 これまでの研究成果の公表については、論文投稿4件と国際学会発表1件を行った(裏面参照)。65歳以上を対象とした調査結果では、日常生活における主観的な健康間よりも自分自身が何かに役立っているという有用感を持つ人のほうが6年生存率が有意に高い傾向があり、高齢期の心理が寿命に影響を及ぼしていることが明らかになった。このことを踏まえて高齢者ケアには高齢者が自分自身が役立てる場を設けることが重要であると考えられた。また、在宅介護を行っている介護者への調査結果からは、介護をしなくてはならないと思う義務的な心理状態が介護継続意欲を高めることが明らかになった。高齢者介護の場合は、介護者にとって介護活動が一つの日常の役割になっていると考えられた。また、この義務的な心理状況は、女性よりも男性が強い傾向があり、男性介護者は、食事や更衣などの介護援助を要介護者の生活リズムを整えながら行うことが女性よりもできない傾向にあるものの、自分が介護をしなくてはならないという義務感を強くもち、また子や社会に頼らないで介護をしようとする抱え込み介護への危険性を孕みやすい傾向が窺えた。
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