介護状況を想定した場合に配偶者間で互いを支え合わなくてはならないと思っている義務感をテクニカルタームとして「a Spousal Obligation to Care for Each Other(以下SOCEO)」と設定した。本研究目的は、SOCEOの概念構造の検討およびこの概念を測定する尺度作成を目指すことであった。 2006年度の調査でSOCEOの概念を構成する要素として21の要素について仮説を立てた。しかし、この21の要素には相互作用があると考えられるものや要素関係の強さの差などがあると考えられた。そこでSOCEOを一つの概念として扱うことが妥当であるか再検討した。追加調査を2007年度~2008年度にかけて実施した。結果は、夫婦間介護者は老親介護者と異なり、要介護者を介護することの意味を「介護している」と捉えるよりも、配偶者におきた身体状況の変化に生活を変容させながらも「夫婦として生活を続けているだけ」と捉える場合があった。介護が加わることによって変化した夫婦の生活を整理するためにSOCEOの概念として導いた21の要素を時間経過で整理し、介護の事象が発生する前にみられたSOCEO構成要素を夫婦関係によって生じる概念と位置づけた。また、介護によって生じた概念として位置づけたもののうちSOSEOとしてネガティブな影響を及ぼす可能性のあるものを整理した。これとは別に夫婦関係の破綻への恐れによってネガティブな影響を及ぼすものもみられた。当初、SOCEOとして考えた21の要素は一つのまとまりとして測定することよりも、夫婦関係にネガティブな影響をあたえるものとポジティブな影響を与えるもので区別することで夫婦間介護者への支援につながる示唆が得られた。
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