本研究の目的は、わが国の精神医療における暴力発生予測のアセスメント項目と暴力発動のリスクファクターを明らかにし、暴力発生に関する短期予測・長期予測のためのアセスメントツールを開発することである。 平成18年度は、(1)わが国で1990年から2005年までに発行された精神看護の教科書・参考書を対象とした暴力発生予測のアセスメントの検討、(2)国内精神科病院8ヶ所のマニュアルの検討・現任教育の現状把握、(3)精神医療に携わる看護師の暴力発生予測に関するアセスメントについてのインタビューを実施した。その結果、(1)大部分のものは、幻覚・妄想、攻撃、興奮、不安といった症状別看護と隔離・拘束における看護という項目で暴力に関する記述がされているが、暴力発生の危機に関する判断基準は具体的に記述されていなかった。2000年前後から、暴力発生予防や危険防止のための技術、組織的な暴力マネジメントに関する研究が行われるようになり、暴力発生の危機が高まる過程や暴力発生の危機にある状態について記述されるようになった。(2)マニュアルでは、症状別看護や隔離・拘束における看護、暴力発生時の患者への対応に関する項目は整備されているが、暴力発生のリスクをアセスメントする上で看護師の臨床知によるところが大きいことが明らかになった。現任教育において、数年前より暴力発生予防や危険防止のための知識・技術に関する研修を導入する病院が増えていることが明らかになった。(3)看護師や暴力発生のリスクをアセスメントする上で、患者個人の状態の変化のみならず、人的・物的な環境の変化が患者の暴力発生の段階に影響を与えているため、環境要因もアセスメント項目としていることが明らかになった。今後は暴力発生予測のアセスメント項目、判断基準の整理を行い、暴力発生予測のアセスメントツールを作成する。
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