研究概要 |
本研究の目的は、わが国の精神医療における暴力発生予測のアセスメント項目と暴力発動のリスクファクターを明らかにし、暴力発生に関する短期予測・長期予測のためのアセスメントツールを開発することである。 平成19年度は,(1)初年度の成果から暴力発生予測のアセスメント項目の抽出および暴力発生予測のアセスメントツール(チェックリスト)の作成,(2)本研究の目的・方法等について同意が得られた国内の精神科病院2ケ所で急性期病棟に入院している患者を対象に調査を実施した。その結果,(1)暴力予測のアセスメント項目として,a.患者の現在の状態:いつもの様子との違い,言動・表情の変化(落ち着きのなさ,乱暴さ),睡眠と休息のリズムの変化,他者との関わり(口論・トラブル,威嚇),説明や指示への反応,訴えや要求の一貫性,b.患者個人のリスクファクター:過去の暴力,暴力が身近にあった生育歴,思春期以前の不適応,アルコール・薬物の使用,イライラや落ち着きのなさを引き起こす患者の個人的出来事,治療・看護の変化,c.環境要因が挙がった。患者個人の現在の状態については,「なんかおかしい」「いつもとなんか違う」という感じをつかんだ場合,継続して患者を観察するために,チェックリストの項目の最初に取り入れた。また,現在,このアセスメント項目を用いた調査を実施中である。今後は,アセスメント項目を使用した調査の結果の分析と臨床スタッフとの検討を実施し,暴力発生予測のアセスメントツールを作成する。
|