研究概要 |
本研究の目的は、わが国の精神医療における暴力発生予測のアセスメント項目と暴力発動のリスクファクターを明らかにし、暴力発生に関する短期予測・長期予測のためのアセスメントツールを開発することである。 平成20年度は、平成19年度の調査結果をもとに調査対象施設を加え, 暴力発生予測のアセスメンツール用いて調査を行った。その結果, 暴力の短期予測のアセスメント項目として, (1)「なにかおかしい」「なんかいっもと違う」(2)焦燥・興奮, (3)混乱, (4)衝動性, (5)言語的威嚇, (6)物理的威嚇, (7)身体的威嚇, (8)いつものその人の違い(具体的に記載)があがった。患者の現在の状態を把握するために, (1)の「なにかおかしい」「なんかいつもと違う」を感じ取り, アセスメント用紙にチェックし, (2)〜(8)の項目について48時間継続した観察を行うことが暴力の発生予測に有効であることが示唆された。さらに, 研究参加者への聞き取りから, アセスメント項目(1)は, 「いつもとなんか違う」という職具の感じを伝達することが難しく, 職員の直感を「言語化されない/できない」「記録に残らない/残せない」ために継続した観察に結びつかないといった暴力のアセスメントを行ううえでの難しさを軽減し, 職員間でのアセスメントの共に役立つことが確認された。本研究では暴力発生予測のアセスメントツールの作成を行ったが、今後は, 観察した暴力の予兆から対応への具体策の明確化・明文化が必要である。
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