研究概要 |
本研究の目的は,介護老人保健施設(以下老健とする)における看取りに対する揺らぎと満足度について,施設スタッフと看取りを終えた家族の両者の視点から明らかにすることである。本年度は一次調査として,第14-17回全国老人保健セ設大会において「看取り」「終末期ケア」等をテーマに発表を行った45施設に勤務する看護管理者および看護識者,介護識者に対し質問紙調査を行い,施設スタッフが抱える葛藤や困難,看取りに対する満足度が明らかににした。 1.分析対象:調査票の配布は総数1820部(看護管理者45,看護識者501,介護識者1274),回収数は525(回収率28.8%),分析対象は有効回答の513<看護管理者22(有効回収率48.9%),看護識者166(有効回収率33.1%),介護識者325(有効回収率25.5%)>とした。 2.看護管理者について:1)看護管理者が捉えたスタッフの揺らぎや満足感:管理者からみて『老健の看取りについて看護識者は満足感を感じていると思う』と答えたのは16人(80.0%),『介護識者』の場合は12人(60.0%)であった。また,『老健の看取りについて看護識者・介護職者は揺らぎを感じていると思う』がともに8割を占めた。『看取りの質』について『高い・やや高いと思う』と答えたのは12人(54.5%)であった。2)看取りへの看護管理者の思い:『老健での看取りに対する本人または家族の揺らぎを感じたことがある』管理者は13人(65.0%),『管理者自身が揺らぎを感じたことがある』のは7人(35.0%)であった。管理者自身の揺らぎへの対処として,「スタッフと話し合い,思いを共有した」「これでいいのだと自分を納得させた」という意見が多かった。看護管理者は老健における看取りを意味あるものと捉え,半数以上の者が看取りの質が高いと答えながら管理者自身も揺らぎを感じていた。管理者は揺らぎの対処法としてスタッフとの語り合いを挙げており,スタッフを支援するだけではなく管理者もまた支えられていることが窺えた。 3.看護職者および介護識者について:『老健で看取ること』に,『積極的・やや積極的』であると答えた看護識者53.4%,介護識者39.25で看護識者の方が老健で看取ることに対し積極的な姿勢であった。家族へののかかわりにおいて,介護職者は看護識者に比して死にかかわるコミュニケーションや看取りの準備姦どに消極的な向であったが,『入所者と家族が一緒に過ごせる間をつくる』について積極的な傾向であった。看護職・介護識者が捉えた入所者または家族の意思の揺らぎについては,看護識者の方が感じている傾向が強かった。『老健で看取りの質の評価』では,看護識者が介護識者に比して質が高いと答えていた。介護識者は,死に関するかかわりについて消極的であったが,入所者・家族に対し今このときを大切に過ごせるかかわりを行っていることが窺えた。
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