研究概要 |
本研究の目的は,介護老人保健施設(以下老健とする)における看取りに対する揺らきと満足度について,施設スタッフと看取りを終えた家族め両者の視点から明らかにすることである。本年度は二次調査として一次調査の結果を受け,インタビューにより,実際に看取りを行っている老健に勤務する看護管理者および看護職者,介護職者が抱える葛藤や困難,看取りに対する満足度について検討した。 1.協力者:協力者は10名で,看護管理者1名(女性,40歳代,老健経験年数13年),看護職者4名(女性4名, 平均年齢35.3歳,老健経験年数5.5年),介護職者5名(男性2名・女性3名,平均年齢38.6歳,老健経験年数11.2年)であった。 2.結果:看護職者・介護職者ともに,老健での看取りは「利用者・家族と長い間に築いてきた関係が基盤」にあり,看取りのケアは特別なものではなく「いつもの日々の延長にあるもの」と考えていた。老健での看取りには家族との関係が重要であり,「家族の揺れに寄り添い」ながら一緒に関わることを大切にしていた。老健での看取りは「看取りを行うと決めてから最期までの経過が長い」ことが特徴であると話し,その長い経過により「家族・スタッフともに最期の時の準備ができる」と感じていた。また,「多職種者が関われる」ことも特徴であると捉えており,相談しながらよりよいケアを提供している様子が窺えた。両職者ともに葛藤や困難感じるのは「利用者に痛みや苦痛がある」,「家族の気持ちが揺れる」時であったが,特に看護職者は「痛みや苦痛の軽減の限界」「医師の高齢者の心身に対する理解の未熟さ」を感じていた。両職者は,葛藤や困難を抱きながらも利用者・家族にとってよりよい時間となるよう,家族に対してやスタッフ同士で[安心の提供」を心がけながらケアを行っている様子が窺えた。両職者ともに「利用者の安らかな顔」,「家族からの感謝の言葉」に満足感を感じていたが,看護職者は病院と比して「最期の時間のずっと前から関われる」ことに満足感を感じていた。一方で,元気な時の姿を記憶しておきたいことから「できれば最期の瞬間に立ち会いたくない」気持ちがあると話す協力者が多かった。また,看取りに対するケアの考え方には,自らの人生経験が反映されていることが窺えた。
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