本研究は、慢性統合失調症患者の意思決定を重視し、より質の高い医療・看護を提供するため、慢性統合失調症患者が認知しているセルフケア能力を明らかにすることで、患者参加型の医療の標準化をめざす指標を検討することを目的としている。本年度は、慢性統合失調症患者のセルフケア能力について、国内外の文献・オレム理論の10パワー構成要素を基に「慢性統合失調症患者セルフケァ能力」の構成要素を検討した。その結果、【1:健康に対し、注意と関心を持ち続ける能力】【2:身体的エネルギー(体調)を認識できる能力】【3:身体の調整を行う能力】【4:論理的な思考能力(セルフケアがなぜ必要なのかの理解)】【5:動機付け(目標を定め、自分の生活や健康に有益だと理解できる)】【6:意思決定し、実施する能力】【7:専門家から技術を獲得し、保持し、実施する能力】【8:認知、知覚、操作、対人関係能力】【9:よりよいセルフケアに近づけるために必要な能力】【10:セルフケア行動を、一貫して、個人・家族・地域での生活に合わせて行う能力】の10因子、計50項目を作成した。また慢性統合失調症患者のケースをいくつか想定しながら、セルフケア能力の査定が可能か検討を重ねた。その結果、セルフケア能力に影響を与える因子(幻覚妄想による認知思考障害・陰性症状、薬の副作用など)が明確となり、2軸での評価が必要であることがわかり、そのアセスメントツールを作成した。 次の段階では、学部内の倫理審査委員会の審査を受けた後、プレテストを行いエキスパートナースを対象に作成したインタビューガイドを用いて、慢性統合失調症患者のセルフケア能力をどのようにみているのか、またセルフケア能力を認識しているのかインタビューを行う予定である。また、多様な視点からの意見を得ることができるように、並行して対象者の選定とインタビュー依頼の準備を進めている。
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