18年度の研究目的は、「家庭訪問事業において母親に拒否された経験を持つ保健師」及び「保健師の訪問を拒否した経験を持つ母親」に対する「家庭訪問支援の拒否」をテーマとした面接調査の枠組みを構築することであった。児童虐待予防を目的とした保健師による家庭訪問事業に関する先行文献を検討し、子育て支援事業に携わる保健師が参加する研修会において家庭訪問事業の実態に関する情報収集を行った。 文献検討および保健師研修会における情報収集の結果、児童虐待の早期発見を目的とした取り組みとして、乳幼児健診未受診児への訪問指導の取り組み、児童虐待チェックリストや問診項目の活用および評価、被虐待児への援助に関する事例などが報告されていた。地域保健に携わる専門識者が、児童虐待を予防する観点からも母親のメンタルヘルス上の課題を支援する必要性に着目しており、育児支援の各種施策に母親のメンタルヘルスをアセスメントするツールを活用する模索が行われていることが示唆された。しかし、家庭訪問事業を受ける母親に焦点を当てた報告は乏しく、家庭訪問事業をより有効に活用するためには、訪問事業を受けた母親の認識やニーズについて調査する必要性があると考えられた。 以上の結果かち、今後は、「実際に家庭訪問事業において母親に拒否された経験を持つ保健師」及び「保健師の訪問を拒否した経験を持つ母親」に対する面接調査を実施し、(1)母親が保健師の訪問を拒否した理由、(2)母親はどのような援助を必要としていたか、(3)保健師は母親の訪問拒否をどのように捉えていたか、(4)保健師は母親の訪問拒否にどのように対応したか、(5)訪問を拒否された場合の保健師の対応において普遍化できるケア技術はあるか、などの観点から内容分析を行い、家庭訪問支援に関する保健師の意識と母親の意識を比較検討する予定である。
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