1.加齢変化に伴うマウス嗅上皮変性の頻度と分布、変性の程度の検討 生後10日、1ヶ月、3ヶ月、5ヶ月、7ヶ月、11ヶ月、16ヶ月の各日月齢雌ICRマウス(各群10-30匹)をそれぞれ固定、頭部のパラフィン切片を作成し、H-E染色にて組織構築を観察した。また同切片に抗olfactory marker protein(OMP)抗体及び抗β tubulin III抗体による免疫染色を施し、各齢群において嗅上皮全体に占める変性部位の割合、及び変性の程度を定量的に解析した。(結果)嗅上皮の変性は5ヶ月齢及びより高齢のマウスで認められた。年齢とともに嗅上皮全体に占める変性部位の割合は増加し、また高度変性部位の割合も増加した。抗OMP抗体で可視化される変性部位において、β tubulin III陽性細胞は増加している部位と減少している部位があった。この結果は障害程度が神経幹細胞に及んでいない場合は成熟嗅神経の脱落のシグナルがフィードバックされて神経新生が亢進するが、障害が高度となり幹細胞にも及んでいる場合は神経新生能自体が低下することを示唆していると考えられた。 2.メチマゾール投与による嗅上皮傷害モデルマウスの作成 生後10日、3ヶ月、16ヶ月の各日月齢雌ICRマウスに抗甲状腺薬であるメチマゾールを75mg/kgBWで腹腔内投与し、嗅上皮を破壊した。投与後1日から3ヶ月の9時点でマウスを固定、切片を作成し、H-E染色及び抗OMP抗体による免疫染色を施して嗅上皮の変性及び再生過程を観察、各齢群で比較した。(結果)いずれの群もメチマゾール投与1日後に嗅上皮はほぼ完全に破壊され、成熟嗅神経は脱落した。その後成熟嗅神経細胞が徐々に増加したが、10日齢群では約1ヶ月で嗅上皮はほぼ完全に再生したのに対し、16ケ月齢群では3ヵ月後もコントロール群と比較し嗅上皮は薄く、また変性の残存領域も多く認められた。
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