1.加齢マウスの嗅上皮変性部位の上皮下にみられるBowman腺の変化 生後10日齢から16ケ月齢の各齢マウスを固定、鼻腔組織試料を作成した。切片にH-E染色、抗OMP抗体による免疫染色及びHID-ALB染色を行ってBowman腺の形態と分泌粘液の組成の変化を検討した。【結果】Bowman腺の形態異常は加齢に従って増加し、特に嗅上皮の変性部位の上皮下に高頻度で認められた。また正常のマウス鼻粘膜ではHID-ALB染色により呼吸上皮の粘液は青色(シアロムチン等)、嗅部の粘液は黒紫色(スルフォムチン等)に染色されるが、Bowman腺の変性部位では時に青色の染色が認められた。【考察】加齢変化に伴う嗅粘膜の傷害では上皮下の嗅覚支持組織にも変性が加わっていること、またBowman腺の変性により嗅粘液の組成が変化する可能性が示された。 2.嗅上皮傷害モデルマウスにおいて加齢変化が嗅上皮の再生過程に及ぼす影響の検討 10日齢、3ケ月齢、16ケ月齢のマウスにメチマゾールを腹腔内投与して嗅粘膜障害を惹起させ、投与後1日から3ケ月までの計10時点で各群数匹ずつ固定、鼻腔組織試料を作成した。切片にH-E染色及び抗OMP抗体、抗βIIItubulin抗体、抗Ki-67抗体による免疫染色をそれぞれ施し、染色パターンの変化を年齢別に検討した。【結果】いずれの年齢群もメチマゾール投与後の時間経過でKi-67、βIIItubulin、OMPの順に陽性細胞が増加し、各分子マーカー陽性細胞の出現パターンには明らかな年齢による差は認めなかったが、16ケ月齢群では投与後3ケ月に至っても完全な嗅上皮の再生は行われず、各分子マーカー陽性の細胞数は少ない傾向が見られた。【考察】嗅上皮の再生能力が加齢変化とともに低下し、これは細胞の分化過程の遅延よりむしろ増殖能の低下による可能性が示唆された。
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