研究概要 |
GnT-V発現抑制絨毛外栄養膜細胞(EVT)モデルとして絨毛癌細胞株JarにsiRNAレトロウイルスベクターを遺伝子導入し、機能実験を行った。siGnT-V導入株ではmock株に比べて、MTS assayによる96時間までの増殖能に差は見られなかった。Migration assayおよびmatrigel invasion assayでは遊走細胞は2.1倍に、浸潤細胞は3.4倍に亢進した。 GnT-V発現抑制による浸潤能促進機構を明らかにするために、zymographyによるmatrix metalloproteinase活性の変化を確認したが、MMP-2,MMP-9活性ともに変化は認めなかった。次に、細胞外基質への接着能を検討すると、ラミニン、フィブロネクチン、コラーゲンIおよびIVすべてにおいて接着能は亢進していた。絨毛細胞が浸潤能を持つEVTに分化するときには、膜表面に発現するインテグリンのサブタイプが基質の変化とともに変化し、浸潤に最も重要であるのはα5β1インテグンである。インテグリサブタイプの発現をフローサイトメトリーで確かめると、α1,α5,α6,β1インテグリンすべてに発現変化は認めなかった。しかし、α5β1インテグリンによる免疫沈降後にL_4-PHAを用いたレクチンブロットを行うと、α5β1インテグリンヘのβ1-6GlcNAc鎖付加レベルがGnT-V抑制株において明らかに抑制されていた。免疫沈降後に行ったα5、β1インテグリン抗体を用いたWesternblotでもそれぞれの蛋白発現レベルに変化は認めなかった。 以上より、ヒトEVTにおいてはGnT-Vがα5β1インテグリンにβ1-6-G1cNAc鎖を付加することによって、浸潤を抑制している可能性が示唆された。細胞における分子の機能は、蛋白発現レベルのみでなく糖鎖修飾によってさらに制御されることは、今後の研究においても重要な視点である。
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