研究課題
本研究では、従来のウイルスベクターでは不可能であったspecificとsystemicの両方の効果を併せ持つ弱毒化麻疹ウイルスベクターを開発してきた。より強力な抗腫瘍効果を発揮するウイルスの開発のため、ウイルスの感染・増殖に伴って治療効果を持つ2種類の血管新生阻害蛋白、及び免疫系を刺激する蛋白を発現する組換え弱毒化麻疹ウイルスを作成した。これらの蛋白は、既にin vitro及びin vivoにおける抗腫瘍効果が証明されており、その臨床応用がなされている。血管新生阻害蛋白であるマウスのエンドスタチン、及びヒトのツマスタチン(マウスでも同様の効果を発揮する)をコードするcDNAは、感染細胞で発現した蛋白が細胞から放出するように、pBLASTベクターのヒトIL2 signal seauenceの分泌シグナル下、又はpSecTag2ベクターのマウスIgκ鎖の分泌シグナル下にクローニングした。この分泌シグナルから血管新生阻害蛋白までを増幅したPCR産物を、麻疹ウイルスゲノムプラスミドに挿入した。一方、免疫系を刺激するマウスの顆粒球・マクロファージコロニー刺激因子をコードするcDNAも、上記と同様にウイルスゲノムに挿入した。これまで開発してきたスターシステムによって、上記の外来遺伝子を発現する組換え麻疹ウイルスを作成した。組換え麻疹ウイルスから放出されたツマスタチンは、マトリゲルとヒト静脈血管内皮細胞(Huvec細胞)を使った血管新生のin vitroモデルにおいて、血管阻害効果を発揮することを確認した。次に、A549ヒト肺癌細胞株をSCIDマウスの腹側の皮下に移植し、腫瘍直径が約0.5cmに到達した時、10^6Spfuの組換え麻疹ウイルスを投与した。GFP発現コントロールウイルスとツマスタチン発現ウイルスの抗腫瘍効果には差がなかったことより、ウイルスの投与量と投与回数を増やす検討が必要となった。
すべて 2008 2007
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件) 学会発表 (1件) 図書 (1件)
Journal of Virology 81
ページ: 13149-13157
Gene Therapy 14
ページ: 1573-1586
Molecular Therapy 15
ページ: 677-686