VSOPの生理的役割の解明のためにまず、VSOP発現組織の同定を行った。現在までに定量的RT-PCRにて脾臓、骨髄、マクロファージなど、血球系細胞での高発現が確認できている。これをさらに確かめるために、共同研究者とともにin situ hybridizationを行ったところ、RT-PCRの結果同様、脾臓で発現が確認できた。また抗VSOP抗体を作製し、組織における免疫染色、ウエスタンブロットを行ったが、同様に脾臓における発現が確認できた。また一部、B細胞でも発現が確認できた。 また、VSOPノックアウトマウスの作製を行っているが、ヘテロマウスどうしの交配により、ノックアウトマウスが産まれている。このマウスはアメリカのジーントラップES細胞バンクのES細胞を用いて作製したが、この方法を用いて作製したホモマウスではRT-PCRレベルでVSOP遺伝子が完全に消失していることを確認した。このマウスは正常に発生し、正常に交配もできるが、生後半年以上経たマウスでは明らかな脾臓肥大が認められた。現在ノックアウトマウスの組織切片を作製し、HE染色などを行っている。 一方、このマウスから採取したマクロファージでは膜電位に依存したプロトン電流が消失することを確認した。同様に好中球においてもプロトン電流は完全に消失することを確認した。これらの細胞において、活性酸素分泌量を調べたところ、VSOPノックアウトマウスで、活性酸素産生量が減ることを共同研究者とともに確認した。また、個体レベルでの影響を調べるために、真菌を感染させる感染実験を国立感染研究所と共同で行っている。
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