現在、デジタルコンテンツの著作権を保護する仕組みとして、DRM (Digital Rights Management)技術が盛んに研究されている。DRM技術の一つとしてトレイタトレーシング技術があるが、これは配信コンテンツの流通状況を監視し、不正流通に関与する端末をリアルタイムに特定する技術である。我々は、ネットワーク上におけるパケット量の変化を波形として表し、その波形のマッチングによりトレーシングを行う、ネットワーク型トレイタトレーシング技術を考案した。しかしながらこの手法においても、遅延変動の増加によりその精度が低下する場合があった。そこでその改良手法として、本研究では、パケットの到着時間に依存せず、遅延変動に左右されない新しいトラヒックパターン生成方式を考案した。この改良版ネットワーク型トレイタトレーシング技術の実効性について、1Gbpsの高速な通信環境にコンテンツ配信システムを構築し、数々のストリーミング映像を用いた実証実験を行った。この実証実験では、実際の大規模ネットワーク配信環境を模して、ユーザに至る途中経路にはエミュレータによる擬似遠隔地環境を構築した。そして、この環境下における実験結果から、改良版手法では、以前の手法に比べて格段に高いトレーシング精度を実現した。この本研究で考案したトレイタトレーシング技術を利用することで、遅延の大きい通信環境でも高精度なコンテンツ不正流通・監視が可能となることが確認できた。
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