本年度は、換気量(VE)増加に伴う血中二酸化炭素分圧低下によって生じると考えられている脳血流低下反応と体温上昇に伴うVE増加反応の関連性について検討するととを目的として実験を行った。 被検者は健康な男性12名であった。被検者は上半身に水循環スーツを着用し、下半身を湯に浸漬して、安静状態で体温を上昇させた。実験中、食道温(T_<es>)、VE、呼気終末二酸化炭素分圧(PETCO_2)、中大脳動脈平均血流速度(MCAV_<mean>)、心拍数などを測定した。実験で得られたVE、PETCO_2、およびMCAV_<mean>の値をT_<es>に対してプロットし、T_<es>上昇に対するVE、PETCO_2、およびMCAV_<mean>の変化を評価した。 加温に伴いT_<es>、VE、心拍数は上昇・増加した。T_<es>は加温40分で38.2±0.2℃まで上昇した。一方、PETCO_2、MCAV_<mean>は加温に伴い低下した。MCAV_<mean>は加温前には55.3±4.7cm/sであったが、加温40分で36.7±4.4cm/sとなり、約34%低下した。MCAV_<mean>をT_<es>に対してプロットすると、MCAV_<mean>はT_<es>が37.8±0.2℃に達するまではほぼ一定であったが、その温度を超えると急激に低下することが示された。同様にVEおよびPETCO_2をT_<es>に対してプロットすると、VEはT_<es>が37.8±0.1℃に達するまではほぼ一定であったが、その温度を超えると急激に増加し、PETCO_2はT_<es>が37.7±0.1℃に達するまではほぼ一定であったが、その温度を超えると急激に低下した。これら3つの深部体温閾値の問に有意差はなかった。 これらの結果から、体温上昇時に見られる脳血流低下には、体温上昇に伴うVE増加が強く影響することが示唆された。
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