研究概要 |
本年度は、暑熱順化することで体温上昇に伴う換気量(VE)増加反応が改善されるかを検討することを目的として実験を行った。 被験者は健康な男性7名であった。実験では、最高酸素摂取量(VO_<2peak>)の測定と暑熱下運動テストを、暑熱順化トレーニング前後で行った。暑熱下運動テストでは、環境温37℃、湿度50%に設定した室内で50%VO_<2peak>強度の自転車運動を行った。運動中、食道温、VE、前腕血管コンダクタンス(FVC)、心拍数などを測定した。実験で得られたVEやFVCの値を食道温に対してプロットし、食道温上昇に対するVEやFVCの変化を評価した。暑熱順化トレーニングは、環境温37℃、湿度50%に設定した室内において、20分間の自転車運動(50%VO_<2peak>強度)を10分間の休息を挟んで4回行い、これを6日間連続で行うというものであった。 VO_<2peak>は、暑熱順化トレーニング前(46.0±2.3 ml/kg/min)よりもトレーニング後(49.3±2.0 ml/kg/min)で有意に高い値を示した。FVC増加の深部体温閾値は、暑熱順化トレーニング前(36.9±0.1℃)と比べてトレーニング後(36.5±0.1℃)に有意に低下し、皮膚血管拡張の感受性は、トレーニング前(12.8±1.5 AU)と比べてトレーニング後(20.5±2.9 AU)に有意に増加した。一方、食道温とVEの直線関係の傾きは,トレーニング前後で有意な変化は見られなかった(8.6±3.1 l/min/℃ vs.9.3±3.7 l/min/℃)。 FVCの結果から考えると、今回行った暑熱順化トレーニングは、暑熱順化プログラムとしては非常に有効であったと考えられる。しかし、体温上昇に対する換気充進反応には、トレーニング前後で差がなかったことから、この換気反応には暑熱順化反応が見られない可能性が示唆された。
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