研究課題
背景と目的本年度の研究では、国内外ではじめて、PETやfMRIよりも時間分解能が優れている脳磁図(MEG)を用い、視覚情報と感覚情報の再活性化が記憶の検索時のどの段階で起こるのかを検討し、感覚情報の再活性化が長期記憶の検索プロセスにどのように関与しているのかを明らかにすることを目的とした。方法実験では、120個の記銘単語を作成し、単語がその単語と関連した音声を伴って呈示される聴覚条件、その単語を描写する画像を伴って呈示される視覚条件、単語のみ呈示される文字条件の3条件を設定した。記銘段階では、これら3条件の単語がランダムに呈示された。記銘段階終了後、対象者に再認課題を実施し、その脳活動をMEGを用い計測した。結果及び考察実験の結果、再認成績については聴覚条件の成績が文字条件よりも有意に優れていた。情報源再認課題では、聴覚条件、視覚条件、文字条件の順で情報源再認成績が良いことが示された。このような行動データの差異が、脳のどの部位に反映されているのかを検討するために、3条件間でMEGデータの比較を行った。その結果、聴覚条件では、左の聴覚野(BA22)において、文字条件に比べて有意に大きな神経活動が推定された。この結果は、聴覚野の再活性化が本研究でもみられたことを示している。また聴覚情報による再活性化は、492-535msと遅い段階でみられた。二方、視覚条件では、右の紡錘状回(BA37/19)において、文字条件に比べ有意に大きな神経活動が推定された。右の紡錘状回(BA37/19)は画像の処理との関連が示唆されており、この結果は、視覚条件においても再活性化がみられたことを示唆している。視覚及び聴覚情報の処理を担う脳部位が再活性化するという本研究の結果は、感覚情報を伴ったエピソード記憶の検索は感覚情報に依存していることを示している。
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老年精神医学雑誌 18・2
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Brain Research 1101
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生老病死の行動科学 11
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神経心理学 (印刷中)