背景と目的 本年度の研究では、国内外ではじめて、快・不快といった情動を喚起する視覚刺激を用い、視覚情報の再活性化に情動が及ぼす影響を検討するとともに、長期記憶の検索プロセスにそれらがどのように関与しているのかを明らかにすることを目的とした。 方法 実験では、120個の記銘単語とその単語を表す画像を刺激として用いた。120の画像のうち40個は快な情動を喚起し(快条件)、40個は不快(不快条件)、残りの40は感情を喚起しないニュートラルな画像(ニュートラル条件)であった。被験者は単語と画像を記銘することが求められ、記銘してから1週間後に、単語の再生、及び再認課題を実施し、その際の脳活動をMEGを用いて計測した。 結果及び考察 実験の結果、行動指標では、ニュートラル条件と比較し、情動を伴う快条件、不快条件の記憶成績が優れていた。MEGデータの分析を行った結果、紡錘状回、及び前頭葉で情動を伴う条件においてニュートラル条件と比較し、強い活動がみられた。また、紡錘状回の活動は前頭葉の活動よりも先に見られた。この結果は、情動が視覚情報の再活性化を強め、その結果、記憶の検索を容易にしている可能性を示唆している。
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