研究概要 |
これまでに,観察箱の底に水を張ったグリッド上にラットを置くことにより睡眠障害モデル動物を作製し,すでに,本睡眠障害モデル動物が催眠薬の効力を評価する上で有用であることを明らかにしてきた(Shinomiya et.al., Eur.J.Pharmacol., 2003 ; Shinomiya et.al., Psychopharmacology, 2004).しかし,本睡眠障害モデル動物と睡眠障害患者との病態類似性の評価は不十分であった.そこで,研究代表者らは,科学研究費補助金(若手スタートアップ)の交付を契機として,睡眠障害モデルラットの脳波の周波数解析を睡眠解析装置SleepSign Ver.2.0(キッセイコムテック株式会社)を用いて詳細に行った.その結果,木屑上に置いて測定したラットと比べ,底に水を張ったグリッド上に置いて測定したラットでは,測定開始から最初の2時間でシータ波(4-8Hz),アルファ波(8-13Hz)およびベータ波(13-35Hz)活性の有意な低下が観察され,さらに,測定開始から4時間目まで,オメガ波活性(45-60Hz)の有意な増加が認められた.一方,デルタ波(0.5-4Hz)およびガンマ波(35-45Hz)では,有意な変化は観察されなかった.Perlis MLら(Sleep, 2001)は,健常な者と比べて,うつ病を伴う睡眠障害患者では,シータ波(2.5-7.5Hz)およびアルファ波(7.5-12Hz)活性が有意に低下し,オメガ波(45-125Hz)活性が有意に増加したと報告している.これらの知見から,本睡眠障害モデル動物は,薬物の催眠作用を評価するために有用なモデルであるだけでなく,さらに,ヒトの睡眠障害疾患の中で,うつ病を伴う睡眠障害患者の病態モデルとなる可能性が高い. 平成19年度では,本睡眠障害モデル動物を用いて睡眠薬候補物質の探索を行う.
|