近年、ロボットビジョンの実現に向けて、初期視覚の機能を集積回路として実装する視覚チップの研究が進展している。最近ではマルチチップシステムによる高性能/高機能化が研究のひとつの焦点となっている。本研究課題では、生体の視覚情報処理系のモデルのひとつである結合MRFモデルを視覚モジュールとしたマルチチップビジョンシステムの構成を行い、それにより従来の手法では解決が困難であったオクルージョン(視覚物体の重なりによる遮蔽)が存在する状況下での視覚物体の統合/分離や視覚物体の多重解像度による領域分割の問題を並列的かつ階層的に高速に解くことのできるロボットビジョンシステムの構築を目的としている。 本年度の研究では、領域ベースおよび境界ベース結合MRFモデルを相補的な視覚モジュールとした並列/階層的な視覚情報処理システムの構成に向けて、それぞれの結合MRFモデルの画像処理性能の比較を次のように行った。 ・境界ベースおよび領域ベース結合MRFモデルの数値解析 境界ベースおよび領域ベース結合MRFモデルを表現する偏微分方程式の数値解析を行った。基本的な幾何学要素から構成された視覚画像を入力として与え、計算機ワークステーションによりその動作および問題点について検証した。 ・空間解像度が異なる結合MRFモデルの数値解析 多重解像度処理の実現を図ることを目的として、さまざまな空間解像度に対する結合MRFモデルの出力特性の変化について調べた。視覚画像として高解像度の自然画像を空間解像度の異なる結合MRFモデルに与え、その評価を行った。 以上により示された領域ベースおよび境界ベース結合MRFモデルのそれぞれの動作特性をもとに、空間解像度の異なる結合MRFモデル間の相互作用の効果について検討を進めている。
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