研究概要 |
経皮内視鏡的胃瘻造設術(Percutaneous Endoscopic Gastrostomy : PEG)は開腰手術をせずに内視鏡を使って胃瘻をつくる方法である。PEGによって造設した胃瘻から経腸栄養剤を投与する際に胃食道逆流などの合併症を誘発することがある。その対策として経腸栄養剤の固形化や増粘剤を加えた半固形化が行われている。しかし投与した経腸栄養剤の物性が胃内でどのように変化するかは明らかになっていない。本年度は増粘剤を加えた経腸栄養剤の粘度および離水率に及ぼす酸の影響を検討した。 市販の経腸栄養剤3種類に増粘剤及び粉末寒天を加えた。増粘剤は約3,000mPa・sの粘度となるように加えた。粉末寒天は総液体量に対して0.5%の濃度で加えた。調整した経腸栄養剤に1mol/l塩酸を添加し,添加直後及び30分後に目開き1.70mmのふるいにのせて2分間の滴下量を測定した。試料重量に対する滴下重量から離水率を求めた。また,塩酸添加30分後まで経時的に粘度を測定した。測定にはTVB-10M形粘度計(東機産業株式会社)を用いた。コントロールは離水率,粘度の測定ともに蒸留水を添加した。 増粘剤を加えた経腸栄養剤の離水率は塩酸添加直後,30分後ともに経腸栄養剤の種類にかかわらずコントロールに比較して有意に低かった。一方,寒天で固形化した経腸栄養剤に塩酸を添加した際の離水率はコントロールとの有意な差は得られなかった。粘度は今回検討したいずれの経腸栄養剤も塩酸を添加したときコントロールより有意に高かった。塩酸添加30分後までに得られた最大粘度は経腸栄養剤の種類によって異なっていた。以上の結果より,増粘剤を加えた経腸栄養剤に酸を添加すると種類により得られる最大粘度は異なるが,粘度が増加することが明らかになった。増粘剤を加えた経腸栄養剤は胃内に投与後,酸により粘度が増加することが推察された。
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