研究概要 |
経皮内視鏡的胃瘻造設術(Percutaneous Endoscopic Gastrostomy: PEG)によって造設した胃瘻を介した栄養管理において,合併症対策等を目的として半固形化経腸栄養剤や固形化経腸栄養剤の投与が注目されている。昨年度は増粘剤を用いた半固形化経腸栄養剤の粘度への酸の影響を検討し,酸によって粘度が増加することが明らかとなった。経腸栄養剤は医薬品と食品に分類され,患者の病態や経済的負担を考慮して選択される。本年度は,食品及び医薬品の経腸栄養剤について,半固形化経腸栄養剤,固形化経腸栄養剤の粘度,かたさへの酸の影響を検討した。 食品及び医薬品それぞれ3種類の経腸栄養剤を試料とした。半固形化経腸栄養剤は増粘剤を加えて約3,000mPa・sとなるように調整した。固形化経腸栄養剤は固形化補助食品,粉末寒天を用いて固形化した。固形化補助食品は添付資料の方法に従い,粉末寒天は総液体量に対して0.5%(w/v)の濃度で加えた。調整した栄養剤に1mol/l塩酸を添加して,粘度及びかたさを測定した。 塩酸添加後の半固形化経腸栄養剤の粘度は,蒸留水を添加したコントロールに比較して増加した。固形化補助食品で固形化した経腸栄養剤のかたさは,医薬品では400N/m^2,食品では400〜700N/m^2であった。いずれも塩酸を添加するとかたさが増加し,得られた値は経腸栄養剤の種類によって異なっていた。粉末寒天で固形化した際は,食品,医薬品の分類にかかわらず種類によってかたさが異なっていた。 以上の結果より,固形化経腸栄養剤,半固形化経腸栄養剤の粘度及びかたさは,酸の影響を受けることが明らかになった。胃瘻を介した栄養管理において半固形化あるいは固形化経腸栄養剤を用いる際は,粘度,かたさは酸による影響を受けることを考慮する必要があることが示唆された。
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