研究課題
本研究では発育期の社会的隔離がバレル皮質における経験依存的AMPA受容体シナプス移行に及ぼす影響を調べ、さらにその分子メカニズムを明らかにすることを目的としている。申請者は本課題を申請した時にすでに、生後4日から7日の問の一日6時間の社会的隔離が生後8日から10日におけるGluR4の経験依存的シナプスへの移行を阻害すること、生後12日から14日の期間におけるGluR1の経験依存的シナプス移行を阻害すること、さらに生後7日から11日の問の一日6時間の社会的隔離が生後12日から14日におけるGluR1の経験依存的シナプス移行を阻害することを見出していた。申請者は平成18年度に横浜市立大学大学院医学研究科教授に就任し、本研究費を研究室立ち上げ、申請研究推進のために使用してきた。電気生理学的実験は円滑に進むようになり、以下のような結果を得た。1)社会的隔離の効果のメカニズムとして二つの可能性が考えられる。一つは社会的隔離により細胞内のシグナル系に生化学的に不可逆な変化がおこり、AMPA受容体のシナプス移行に必要なシグナル系が動かなくなっているという可能性で、もう一つは細胞内の生化学的な特性には変化がないが、行動が変化することなどにより通常とは違ったひげ入力があるために正常なAMPA受容体のシナプスへの移行が起こらないという可能性である。前者の場合は細胞そのものが可塑性を失っているということであり、後者の場合は細胞自体が可塑性を保持していると考えられる。この二つの可能性を見極めるために当該研究者はLTP実験を行った。その結果、生後4日から7日の間の社会的隔離により生後9日および13日におけるLTPが阻害された。さらに生後7日から11日の期間の社会的隔離により生後13日におけるLTPが阻害された。2)グルココルコイド アンタゴニストの投与により社会的隔離の効果が阻害された。
すべて 2006
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J. Neurosci. 26
ページ: 13357