本研究は、HMDを利用した複合現実感型CSCWシステムにおいて、HMD装着者グループと非装着者グループとの間の視覚情報ギャップを解消し、円滑な協調作業を実現しようとするものである。本研究では、その解決策として、HMD非装着者に対して、HMDとは異なる「非対称視覚インタフェース」を提供することで、視覚情報を補うことを試みる。本年度は、タスクの内容に依存しないレベルで上記課題を詳細に分析し、HMD非装着者に提示すべき視覚情報の属性およびその要求を満たす視覚インタフェースの特性と仕様について検討を行った。HMD非装着者が予期する情報は、複合現実感型CSCWの文脈においては、3次元の現実世界と仮想世界を共有できるというその技術的特徴から、眼前の現実世界でHMDユーザが体験しているMR空間の状況を自身を基準とする座標系において体験することであると考えられる。しかし、従来、HMD非装着者は、客観視点映像やHMDの映像をモニタ上で観察するにとどまり、MR空間の事象を自身を中心とするの一人称の座標系では共有することができなかった。また、さらに、HMD非装着者とHMD装着者が混在する理由としては、複数人同時体験に要する追加コスト、体験者交替時における手間など、HMDが本質的に持つ物理的制約も大きな条件として考慮しなくてはならない。上記二つの条件において解決手段を検討した結果、投影型インタフェースおよびハンドヘルド型視覚インタフェースが非対称視覚インタフェースとして適切であると考えられる。現在、そのプロトタイプシステムの構築を進めている。ハードウェアに関しては、当該研究期間において市販品をベースとしてコンセプトの検証を行い、その後、より効果的な専用装置の試作を実施する。本年度は、外部に成果を発表するには至っていないが、次年度にて、プロトタイプシステムでの有効性を検証し、日本バーチャルリアリティ学会での口頭発表と論文誌への投稿を行いたい考えである.
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