研究概要 |
本年度は,研究代表者がこれまで取り組んできた解析的因数分解のアルゴリズム(展開点を固定した形式的べき級数環上での因数分解),特に3変数以上の場合の理論研究を推進し,実際に数式処理システムへの実装に取り組んだ.これらは,2変数の場合にも適用可能となっている. 理論研究では,ARCC Workshop : The computational complexity of polynomial factorization (2006年5月:カリフォルニア)での自らの講演"Multivariate Analytic Factorization"を発展させる形で研究を進めた.解析的因数分解では,2変数の場合,初期処理を施すことで主係数が非特異な場合に帰着できるが,3変数以上の場合,そうはいかない.しかし,多変数展開基底法(岩見)と主係数が特異な場合の拡張Hensel構成(佐々木・稲葉)の両方のテクニックを融合させることで,主係数が特異・非特異の両方を統一的に扱うことができるようになり,その成果をまとめた論文"A unified algorithm for multivariate analytic factorization"を投稿中である. 実装面の取り組みについては,投稿中の手法を用いた場合と用いない場合における実装について,京都大学数理解析研究所における研究集会「Computer Algebra -- Design of Algorithms, Implementations and Applications」で,"多変数の解析的因数分解の実装について"というタイトルで発表している. このように,次年度以降の応用研究につながる基盤整備が整いつつある.
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