本研究は、健全な怒りを育てる乳幼児教育を行うための養育者に対する子育て支援活動の方策について検討することを目的とした。まず、どのような面で子育て支援が必要とされるのかを明らかにするために、養育者の怒り要因が子どもの怒り発達に及ぼす影響について調査研究を行った。 1.母親・養育者の面接調査 まず、研究協力に同意した15組16名(夫婦1組含む)の対象者に面接調査を行った。面接は個別に行われ、その内容は家族構成・子ども・養育者について尋ねる半構造化されたものであった。面接の結果、子どもが親の怒り対処を模倣するモデリングが起こっていること等が明らかになった。 2.母親・養育者の質問紙調査 面接の結果、養育者が子どもの怒りに影響を及ぼす可能性が示され、その内容を明らかにすることを目的として質問紙調査を行った。ただし、このような質問紙調査を行うのに適した子ども用の尺度が存在しないため、まず尺度の開発を行った。具体的には、面接の内容を参考に、養育者の評定によって子どもの怒り特性を測定する尺度と子どもの怒り対処を測定する尺度の2つを作成して質問紙調査を実施し、927名の回答を得た。因子分析の結果、怒り特性の尺度からは怒りの生じやすさを表す「怒り喚起傾向」、怒りの冷めにくさを表す「怒り持続傾向」の2因子が抽出された。怒り対処の尺度からは、怒りを上手に表現できない「非主張的行動」、攻撃的な言動で怒りを表現する「攻撃行動」、怒るとすねる「消極的表現」という3因子が抽出された。SEMによるパス解析の結果、子どもの怒り喚起傾向が高いと攻撃行動が増え、非主張的行動や消極的表現は減ることが示された。また、消極的表現を行うことによって怒り持続傾向が緩和される可能性も明らかになった。 引き続き、作成した尺度を用いて養育者と子どもの怒りの関連性について検討することを目的とした質問紙調査を行う。
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