研究概要 |
本研究の目的は,マニュアルを読まずに使いこなすことを可能にするマニュアルフリーマシンを実現することである.機器のマニュアルフリーが実現できれば,時間をかけて使い方を習得する必要がないため,ユーザに苦痛を与えず,初期導入時のコストを軽減できる.機器の扱いに不慣れな利用者であっても,すぐに使いはじめることができるため,特に高齢者や初心者にとって有益であり,高齢化社会に与える影響は大きい. 利用者がマニュアルを読むことなく機器を利用するための基盤技術として,本研究では人工物の機能に気づかせる技術とユーザを混乱させない技術の開発に取り組んだ.機能に気づかせる設計方法として,ユーザの行為に応じてノンバーバルなフィードバックを変化させ,機能の存在に気づかせるアクションスローピングを提案した.実験では,犬型ロボットを採用し,ロボットに実装された簡単な機能を見つける課題を設定した.実験参加者には,ロボットの何らかの機能を見つけるよう指示し,発見するまでの時間を記録した.設定した条件は5条件であり,提案手法を適用した異なるモダリティによる3条件(LEDの面積変化,動作変化,ピッチ変化音声)と,提案手法を適用しない2条件(フィードバックなし,ピッチ変化なし音声)を比較した.分析の結果,ピッチ変化音声条件において発見までの時間が最も早くなり,時間経過にともない機能の発見に誘導できることが明らかになった.つまり,利用者に機器の機能に気づかせるためには,ピッチが高音に変化するフィードバックを行うことが有効であることが示された. また,ユーザを混乱させない設計方法として,部分実行フィードバックを提案し,人間型ロボットに適用した.その結果,ロボットの機能数よりも少ない制御ボタン数のインタフェースを実現した,今後,目的の機能に到達するまでの速度の調査,主観評価を実施し,有効性を検証する予定である.
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