本年度は、現状調査・文献調査に重点を置いて実施した。研究実績として以下の2点を挙げる。 1 地方公共団体における電子自治体構築の実態と情報システムの現状 財団法人日本規格協会オープンソースソフトウェアの標準化調査研究委員会との連携等により、中国地方の地方公共団体および全国の先進自治体等を対象にアンケート調査・分析とヒアリング調査を実施した。調査結果の一部は、同委員会の成果報告書にも反映された。公表されている経費調査等の結果なども参考にすると、大規模な地方公共団体では、レガシーシステムにおけるソフトウェア改修や情報システムの更新などに伴う経費面等の問題、小規模な地方公共団体では、市町村合併などの際に生じる、異なるメーカが提供する情報システム統合における経費面、データ移行の困難さの面等で問題が生じていることがわかった。 2 SOAに基づく情報システム再構築のためのニーズ 先進諸国における動向を文献調査した。欧州諸国においては、異なるハードウェアやソフトウェアで稼動する情報システムの統合を視野に入れ、オープンソースソフトウェアを採用することや、オープンスタンダードに準拠したソフトウェアを採用しデータの相互利用を長期に渡って保証するなどの方針が打ち出されている。また、米国政府や州政府等においては、情報システムのアーキテクチャを最初に設計し、そのアーキテクチャに準拠することを調達の条件とする方針を明らかにしている例が多い。国内においても、北海道庁を中心にHARPと呼ばれる構想に基づき、複数市町村が共同で構築・運用できるシステムの構築・運用が継続されている。これらの状況から、特に国内の地方公共団体が直面している課題を解決するため、ハードウェア機種非依存、ソフトウェア非依存、かつ情報セキュリティ要件を満たしながらデータ交換を容易にする緩い分散処理アーキテクチャが必要とされていることが明確となった。
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