研究課題
岡ノ谷とBjornらによって提唱されている相互分節化仮説を検証するために、プロトタイプモデルとして、リカレントネットで実装されたエージェントたちが、予測に基づいて談話をするモデルを構成した。そして、エージェント数を10として、談話の計算機実験を行った。その結果、談話と学習を繰り返すうちに、ランダムな状態からエージェントごとに特徴的な記号列パターンが出現する現象が観察された。また、エージェントの談話データを分析したところ、記号列パターンの頻度と順位はべき則に従い、ヒトの言語と似た統計性を持つことがわかった。つまり、互いの談話を予測し合うという基本能力のみに基づいて、エージェント間で共有される記号列が自己組織化することが示された。この成果について、2006年4月に行われた進化言語学の国際会議EVOLANG6と8月の日本進化学会で口頭発表を行ない、会場からは大きな関心が寄せられた。現段階のモデルでは、エージェントの談話の駆動力は予測のみである。そのため、記号列パターンは複雑化せず、一人のエージェントが複数の記号列パターンを組み合わせるような現象は見られなかった。したがって、予測のみでは分節化能力はモデル化できず、実験から作業仮説を導く必要がある。また、相互分節化仮説が指摘しているように、エージェントの行動文脈と出力記号列の間に相関ができることが、語が創発するためには重要だと考えられる。相互分節化仮説が正しいとすれば、エージェントにはどのような数学的条件が必要であり、どのような生物学的制約が必須なのか、共同研究者の岡ノ谷氏とBjorn氏と議論を重ねている。今後は、エージェントの行動文脈と談話の相互作用をモデル化してマルチエージェント系を計算するため、本研究費にて購入したワークステーションで大規模シミュレーションを行う予定である。
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Artificial Life (in press)
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Lecture Notes in Computer Science
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