研究概要 |
初年度は,データ収集および筋張力推定ルーティン作成を行った.陸上競技走種目の競技者を被験者とし,国立スポーツ科学センター内陸上競技実験場において,走動作の撮影,地面反力計測,および筋電図計測の実験を行った.被験者には3.3m/sec〜8.0m/secまで8段階の走速度で50m以上走らせ,三次元動作解析システム(VICON612 ; Oxford Metrics社製)により撮影し,身体分析点の三次元座標を得た.また,走路にフォースプラットフォーム(9287A ; Kistler社製)を埋設し,地面反力を計測した.筋電図については,右脚の大殿筋,大腿二頭筋長頭,長内転筋,中殿筋,大腿直筋,外側広筋,腓腹筋内側頭,ヒラメ筋の活動電位をEMGアンプ内蔵電極(SX230 ; Biometrics社製)を用いて表面双極導出法により導出した. 反射マーカ位置をもとに構築した身体の三次元座標および地面反力データから,下肢関節角度および下肢関節トルクを算出した.筋電図は,整流化し,平滑化することによって包絡線を得,MVC時の値で規格化した. 実験で得られた身体の三次元座標および関節トルクデータを筋骨格モデルに取り込み、さらに最適化手法を適用することによって関節トルクを個々の筋に分配するといった筋張力推定ルーティンを作成した.そして,走動作1サイクルにわたる全下肢筋張力についてエラーがなく算出できた.しかし,筋電図と活性パターンが一致しない筋もあることから,今後,筋の収縮モデルの構造,収縮要素の最大短縮速度,最適化計算の評価関数等を様々に変化させ,走動作に適した筋張力推定法を確立する.
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