平成18年度は、ポリイオンコンプレックス型高分子中空集合体PICsomeの形成手法、及び、機能評価の初期検討を行い、その成果がアメリ力化学会誌に速報として掲載された。またその業績に関連して、物質材料研究機構主催の国際シンポジウムInternational Symposium for Young Organic Chemistsにおいて招待講演を行った。以下、研究計画に即して成果を記す。 1.タンパク質を内包したPICsomeを利用したナノ/マイクロリアクターの調製:まず、中空微粒子形成時に機能性タンパク質、特に酸素運搬タンパク質であるミオグロビンを内部に封入し、精製する手法を確立した。封入後、ミオグロビンが活性を維持していることを確認すると同時に、タンパク質分解酵素であるトリプシン存在下においても活性を維持できることを明らかにした。これらの知見は、ナノバイオリアクター構築の上で非常に重要なものである。 2.還元環境応答型PICsomeの構築:PEGブロックとポリアミノ酸ブロックのつなぎ目にジスルフィド結合が入ったブロック共重合体を合成し、ナノスケールの構造体が得られることを動的光散乱、透過型電子顕微鏡(TEM)、原子間力顕微鏡を用いることによって明らかにした。予備的な検討から還元環境下において集合体の形態が変化することを見出した。 3.酸性環境応答型PICsomeの構築:今年度は、合成条件の検討を中心に行った。PEGブロックとポリアミノ酸ブロックのつなぎ目に酸性条件下で開裂する結合を有するもの、あるいは、ポリアミノ酸側鎖としてpH7.4以下で特徴的なプロトン化や構造変化を示すものの導入を検討し、ポリマーの合成に成功した。次年度以降、構造体形成能の確認や、機能評価を行う予定ある。
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