放射線の線量率、出発原料の濃度比、ポリマー種、をパラメータとして、」金/酸化鉄複合ナノ粒子の構造の制御を試みた。高線量率が得られる加速器電子線を放射線源として用いる事で、水溶液中において極めて高濃度の還元種が生成し、結果として金粒子を微小化できることを見いだした。また、出発原料中の金イオン濃度、ポリマー濃度を適宜制御することでも、金粒子を微小化できることを確認した。酸化鉄表面に担持する金粒子数は、出発原料中の酸化鉄濃度と金イオン濃度の比率を変えることで制御できた。保護材として用いるポリマー種として、従来用いてきたポリビニルアルコール(PVA)とは別に、ポリエチレングリコール(PEG)を用いた複合粒子合成に成功した。PEGは放射線照射により架橋・分解反応を起こしやすい為、保護材としての適用が困難であった。詳細な検討により、高分子量・高線量率下という合成条件において、PVAを用いた場合とほぼ同等の性能の複合粒子の合成に成功した。 アミノ酸の吸着特性の評価では、含硫アミノ酸であるシスチン・メチオニンの吸着量が、複合粒子中の金表面積に比例して増大することを確認した。また、保護材としてPEGを用いた複合粒子でも、含硫アミノ酸を選択的に結合する性能を維持していることを確認した。 一部を^<14>Cに置換したメチオニンを用いて、メチオニンの金への吸着様式の解明を試みた。メチル基側もしくはカルボキシル基側に^<14>Cを置換した2種類のメチオニンを用いて、複合粒子への吸着試験を行った。その結果、メチオニンは分子内のC-S-C結合を維持した状態で複合粒子と結合していることが分かった。この結果より、タンパク質末端のメチオニン部位を介して複合ナノ粒子への結合が有効であることが示唆された。
|