本研究では、フォトニック結晶に埋め込まれた原子を用いた量子情報デバイスの実現を目指して、量子情報処理の過程で発生する情報損失を極めて低減させる方法を明らかにした.更に、この結果をベースにして、狙いを定めた量子状態のみを制御できるようなターゲット型のコヒーレント制御手法を明らかにした. 具体的には、まず、フォトニック結晶に埋め込まれた原子の放射スペクトルを計算することで、フォトニックバンドギャップ(PBG)内部にパルス上のスペクトルピークとダークラインが発生することを明らかにした.更に、光パルスを照射してダークラインをスペクトルピークへチューニングすることで、原子の共鳴周波数をPBGの内部においたまま原子の励起状態をコヒーレント制御できることを明らかにした.PBG内部で励起状態を制御することで、励起状態の緩和を強く抑えることができ、この結果を応用することで、情報損失を強く抑制したまま量子情報を処理することが可能となる.また、ダークラインをスペクトルピークへチューニングするさいの周波数選択性が極めて高いことも明らかにした.周波数選択性が高いことから、特定の共鳴周波数を持つ原子に狙いを定めてコヒーレント制御することが可能となる.この結果、フォトニック結晶に埋め込まれている多数の原子(もしくは、量子ドット)の中から、ターゲットとなる特定の原子(もしくは量子ドット)を制御できる.このように、損失を低減し、更に、特定の量子状態のみを制御できるような手法はナノフォトニクスなどの超微細デバイスの開発の基盤技術になると期待できる.
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