研究概要 |
本邦をはじめとする世界諸国において糖尿病の罹患者数は,増加の一途を辿っており,早急な対策が必要な疾病の一つである.また,糖尿病初期や肥満を呈している場合には,脂肪肝を併発していることが多く,脂肪肝ば食後過血糖の増悪,脂質代謝異常症の発症・進展に重要である.研究代表者は本課題の研究において,Rosa canina(ローズヒップ)種子に含まれるアシル化フラボノール配糖体trans-tiliroside (1)のマウスへの経口投与が,体重増加の抑制,肝臓中中性脂肪含量および内臓脂肪重量の顕著な低下および耐糖能の改善を示すことを明らかにした.また,本作用は,肝臓内において脂質代謝酵素群の発現を制御している核内受容体型転写因子PPAR-αのmRNAの発現増加が関与していることを明らかにした.研究代表者は,1の作用機序において,肝臓内での脂肪代謝の促進が重要であると考え,1の化学構造と薬理活性の相関を明らかにする目的で,非糖部をkaempferolからquercetinに変え,さらに1のアシル基であるp-coumaroyl基から,o-およびm-coumaroyl基などを導入した計5種の1誘導体を合成するとともに,ヒト肝癌細胞HepG2を用いた脂肪酸誘発肝細胞内中性脂肪蓄積に与える影響について検討した.その結果,アシル化フラボノール配糖体の脂肪蓄積抑制活性には,非糖部の構造よりもむしろ,糖鎖に結合するアシル基の存在が重要であることを明らかにした.さらに,同細胞を用いて既に蓄積された脂肪に対する細胞内脂肪代謝に対する作用を検討した結果,脂肪蓄積に対する作用と同様にアシル基の存在と化学構造の差異により,活性が変化すること,特に非糖部の構造がkaempferolからquercetinに変化することでより強い薬理活性を示すことなどを明らかにした.
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