研究概要 |
近年各地で多発する大規模な自然災害に見舞われた被災者の長期的な生活復興のメカニズムを質的・量的研究により解明することが本研究の目的である. 研究初年度である平成18年度においては,(1)量的パネルデータを分析資料として,被災者の生活復興の類型を導き出した(反復測定を用いた分散分析による).結果,被災者の長期的な生活復興過程には明瞭な4つの類型が存在することが明らかになった. 特に,長期に渡って生活復興が阻害されている(生活再建が苦しい)被災者にとっては,震災後転居を繰り返すことなく(転居回数が少ない),地域に根ざした生活ができること,まちのイベントなどにも参加できるような雰囲気があること,自分がまちの活動などに参加するという実働だけでなく,「自分のまちの人々はっきあいがある」「みな挨拶をかわす」といった,"地域での人々のつながり(ソーシャル・キャピタル)"の活発さが重要であることが実証的にも明らかになった.被災者支援を長期的スタンスに基づいて実施する際には,個人単位への施策の対応のみならず,"地域のもつ力(地域単位)"にも力点をおく必要があるといえる. 研究2年目である平成19年度には,量的データについて時間的な因果関係を加味した被災者復興モデルを構築することを目標とする.さらに,この量的研究の成果を踏まえ,阪神淡路大震災被災地での(2)エスノグラフィー調査を行い,被災者生活復興モデルの妥当化をはかる.
|