研究概要 |
環境中におけるコイヘルペスウィルスの動態と環境因子の関係を明らかにするために、昨年に引き続き以下の順序で研究を進めた。 1.世界各地でのコイヘルペスウィルスの発生および検出に関する報告を経時的に整理し、コイヘルペスウィルス病の歴史とその発生に関連があると思われる環境因子の抽出を試みた。この作業を通じて環境因子とコイヘルペスウィルスの関連性については、ほとんど関連づけた考察がされていなかった事が明らかになった。 2.次に環境中よりコイヘルペスウィルスを回収する方法の検討を行った。環境中に存在するコイヘルペスウイルスを回収する方法については全く報告が無い事を受け、他の病原性ウィルスの環境水からの検出方法を整理し、その応用を検討した。そして上記1の項目と合わせてとりまとめたものをイギリスのFreshwater Biology誌に報告した(現在印刷中オンライン版:doi:10.1111/j.1365-2427.2007.01874.x)。 3.野外環境より約80個体の野生ゴイを採取し、2で検討したコイヘルペスウイルス検出方法を利用して、野生ゴイからのコイヘルペスウイルス検出と,抗体価を利用した野生コイのコイヘルペスウイルス感染履歴を照らし合わせて評価し、野外における大発生から2年以上経った現在でも、野生コイの約半数がコイヘルペスウィルスを保持している事を明らかにした(現在投稿準備中)。 これらの結果から、コイヘルペスウィルスは今も野生コイの体内に広く生残しており、今後コイヘルペスウィルスへの感染経験が無く、抗体を持たないコイが増えてくるにつれて、再びコイヘルペス症が大発生する可能性がある事が考えられた。
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