本研究の第一段階として、^<30>Si同位体濃縮薄膜を作製し、その構造および同位体組成の評価を行った。さらに作製した同位体濃縮薄膜に中性子線を照射し、薄膜および基板での電気特性変化を計測した。一方でSTMによる半導体中の不純物評価のための計測系の立ち上げを行った。 ^<30>Si同位体濃縮薄膜作製の段階では、まず炭酸ガスレーザーによる多光子解離反応を利用して、Si_2F_6気体を同位体選択的に分解し^<30>Siが濃縮したSiF_4気体を得た。ここで達成された^<30>Si最大濃度は31%であり、濃縮気体の最大収量は1.6gであった。次に得られた^<30>Si濃縮気体を原料として、プラズマCVD法により薄膜を作製した。薄膜の断面TEM観察により均質なアモルファスSi薄膜の形成が確認された。さらに薄膜中の^<30>Si同位体濃度をSIMS計測した結果、原料とほぼ同じ同位体組成比を有することが確認された。 次に得られた^<30>Si同位体濃縮薄膜に熱中性子の照射を行った結果、薄膜の電気抵抗の低下が観察された。これにより、中性子により^<30>Siが^<31>Pに核変換され、薄膜がn型半導体となったことが確認された。一方、基板に高ドープのp型Siを用いれば、中性子照射によって基板の電気特性はほぼ変化しないことが確認された。以上から、本手法において微小p-n素子の実現可能性が示唆された。 一方でSTMによるドーパント計測のための計測系として、バリアハイト計測、およびdI/dV計測系を立ち上げた。また、今後のSTMにおける表面計測の準備として、Si(110)表面の清浄化手法を確立した。
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