研究概要 |
本研究の2年目かつ最終年度となる本年度は、海外での研究成果報告に重点を置き、2007年9月にウイーンで行われた「第6回イラン研究ヨーロッパ学会」にて、"Pilgrimage of the Dead"と題する発表を行った。同発表は、19世紀のイランで顕著に見られた、イラクのシーア派聖地(ナジャフやカルバラー)への「移葬」(=死者を別の場所に埋葬すること)を主題としたものであり、本研究代表者が近年取り組んできた研究のなかでも最も力点を置いているテーマであった。同学会での報告後の質疑応答の活発さからは、本テーマが国際的な研究水準を満たす内容であることが実感された。昨年度にロンドンの国際学会で報告した内容とあわせ、現在、「シーア派ムスリムの聖地巡礼」という題目で英語論文を執筆中である。 研究論文は「ロマンスからヒストリアへ」(上智アジア学,25)の1本のみであるが、400字詰め原稿用紙150枚を超える同論文は、巡礼のもつ「移動」という側面からその途上にある歴史的遺物を対象に、シーア派イランにおける歴史認識の考察へと発展させたもので、今後の研究の方向性を示す内容となった。 最後に、2年間にわたる本研究において、単著『シーア派聖地参詣の研究』(京都大学学術出版会,2007年)をはじめ日本語では十分な成果を出すことができたが、今後は、海外の研究者からの評価も高い、本研究の詳細を、英語あるいはペルシア語で海外に向けて発信することが急務だと考える次第である。
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