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2007 年度 実績報告書

六朝における生命の文学

研究課題

研究課題/領域番号 18820003
研究機関筑波大学

研究代表者

稀代 麻也子  筑波大学, 大学院・人文社会科学研究科, 講師 (80431659)

キーワード郊居 / 沈約 / 隠 / 役割 / 素材 / 表現 / 伝統 / 革新
研究概要

平成19年度は、沈約の代表作である「郊居賦」の演じている役割の具体相を明らかにした。まず、読者それぞれが自由に引用し利用する素材の集積としての役割を果たしている点で「八詠詩」と同じであることが確認された。素材とは、たとえば、隠棲のイメージや「霓」にまつわるエピソードなどである。本年度の取り組みによって得られた最大の成果は、素材の集積としての役割をどのていど豊かに果たし得るかが、作品としてどのていど動的平衡を保っているかにかかっている、という知見が得られたことである。たとえば、神仙を求めて飛翔する場面では『楚辞』が典故として用いられている為に、「曲がりくねった(連巻)」「にじ(霓)」に乗るという表現が極めて受け入れやすい素材になっている。「郊居賦」には、典故としての『楚辞』・「居の文学」という系譜・舗きつらねる表現など、様々な位相において文学的伝統を踏まえた素材が豊富に用いられている。その中から任意のいくつかが取り出され、「郊居賦らしさ」として把握される。士大夫としての教養さえあれば容易に取り出し得る数々の素材がこの作品を極めて高度な動的平衡状態に置くため、「郊居賦」は革新的素材をも引き込み易い。王〓が「霓」を正確に入声で読み上げたのを沈約が喜んだというエピソードは伝統に支えられることのない素材であったが、いかにも沈約らしいとして「郊居賦」を読む時にたびたび取り出される素材のひとつとして広く受け入れられることになったことはその顕著な例である。確乎としてあるようにみえながら常に置き換わりつつ全体として平衡を保つ古典作品の姿は、混迷を極めた現在の社会に生きざるを得ない我々が社会規範の意味を考える契機となり、社会が立ち直る為の杖として新たな規範が立ち現れてくる可能性を示すに違いない。

  • 研究成果

    (1件)

すべて 2007

すべて 学会発表 (1件)

  • [学会発表] 「らしさ」について2007

    • 著者名/発表者名
      稀代麻也子
    • 学会等名
      六朝学術学会第11回大会
    • 発表場所
      湯島聖堂
    • 年月日
      2007-11-18

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公開日: 2010-02-04   更新日: 2016-04-21  

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