一年目となる平成十八年度は、本研究課題の基礎的枠組みを構築するために、これまで展開されてきた「文明の衝突」論の内実、およびその評価に関する基礎的考察を行った。とりわけ、国際社会のなかで文化や芸術がいかなる機能と役割を担っているかに考察の主眼を置き、具体的事例として、現代において国際親善の代表的な場となっているオリンピック大会における「芸術競技Art Competitions」の沿革を調査した。 このオリンピックの芸術競技の研究に関しては、その成果を「近代オリンピックにおける芸術競技の考察一芸術とスポーツの共存(不)可能性をめぐって」(美学会編『美学』第57巻第2号、2006年9月)という題名で学術論文のかたちで公刊した他、「アートか、スポーツか?一オリンピックの芸術競技の興亡をめぐって」という題名で、全日本ピアノ指導者協会(PTNA)の研修会(於:巣鴨、全日本ピアノ指導者協会東音ホール、2007年3月8日)において口頭発表を行った。とりわけ後者の発表を通して、本研究課題の主題が、国際的ピアノ・コンクールのような高度な芸術的技量が問われる場を理解する上でも有意義であることが確認された。 また本研究の基礎的データ部分を構成する、芸術や芸術教育に関わる「自文化・異文化」の意識調査の一環として、研究代表者が講義を行っている複数の大学で学生を対象にアンケート調査を行った。さらにそこで得られたデータの分類と分析を行った。
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