研究課題
本年度においては、第一に入明記諸本の検索を行ない、可能であれば原本調査を行なうとともにその写真を入手し、伝来を含めた書誌情報の確定作業につとめた。この作業の過程で、入明記のみならず、入明記の記主の文集にも多くの日明関係史に関わる情報があり、入明記と同様に近世期に多く筆写されていることに気づき、この種の文集も含めて調査・収集活動を行なった。第二に、上記の作業は、準備や写真の撮影・焼付などに多く時間を有するため、来年度に予定していた作業である、入明記の翻刻ならびに内容に踏み込んだ分析、現地調査なども平行して行なった。15世紀中葉の遣明使の記録である『笑雲入明記』の翻刻は8割方終了し、書誌情報もほぼ確定することができた。翻刻が終了次第、解題とともに公表したいと考えている。現地調査としては、中華人民共和国舟山市・寧波市・杭州市・南京市に赴き、入明記の記述と現地の景観とを対応させるという作業を行ない、文意が揺れたり不明だったりしたところを現地調査の成果から確定していった。なお研究代表者は、日本史出身であり中国での調査や中国語に不案内なため、この現地調査には中国人留学生の協力を仰いだ。この現地調査や入明記の内容分析に不可欠な中国の研究書・史料集・地図などの収集にも意を注いだ。また遣明船は航海中しばしば漂流し、朝鮮沿岸にも辿り着くことがある。したがって韓国史料における遣明船の記事も入明記を理解するうえでは不可欠のものとなる。この点に鑑み、韓国の史料状況の理解も兼ねて韓国の国史編纂委員会を訪問した。
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『前近代東アジアにおける日本関係史料の研究』科研報告書(代表保谷徹)
ページ: 112-180
中世の対外交流-場・ひと・技術(小野正敏, 五味文彦・萩原三雄編)高志書院
ページ: 151-183