本研究は、日本語を母語としない「言語少数派の子ども」を対象とする学習支援において、支援者のどのようなストラテジーが子どもの教科理解を促し、日本語力の発達を助けているのかを探ることを目的とする。具体的には、横浜市の公立中学校の国際教室において、子どもの母語を活用した内容重視型の国語科学習支援を継続的に行い、授業者の指導ストラテジーを明らかにするとともに、在籍級担当の国語科教師のストラテジーと比較しながらその特徴をとらえる。 初年度である18年度は、指導ストラテジーに関する資料収集と支援の授業場面におけるデータ収集を行った。 まず、資料収集については、言語少数派生徒を対象とした指導ストラテジーに関する国内外の文献を収集し、プログラムの特徴を踏まえながら指導ストラテジーの抽出を行った。 次に、授業場面のデータ収集に関しては、横浜市鶴見中学校の国際教室において、平成18年7月から翌年3月にかけて4名の生徒(中国、メキシコ、ブラジル出身)を対象に、週1回、母語を活用した国語の学習支援を実施した。授業は教科課程内の枠組みの中で実施し、国際教室担当の教師が毎回授業を行った。申請者は参与観察を毎週行うとともに、学校、母語話者支援者、生徒の了解のもと、録音・録画等によるデータ収集を実施した。また、支援終了後には、授業者に対してインタビュー調査も併せて行った。 さらに、在籍級の教科担当者の指導ストラテジーと比較分析するため、対象生徒の在籍級の授業についても入り込みを行い、録音によるデータ収集を実施した。 現在では、支援の授業を録音・録画したデータの文字起こしと翻訳作業が完了し、支援者の指導ストラテジーについて分析を進めている。
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