本研究では、京城帝国大学のアカデミズム形成と日本人・朝鮮人学生を中心とした日本語文芸活動に焦点をあて、それらが朝鮮半島という地域的独自性を踏まえた思潮としてどのように特徴づけられるのかを解明することを目的にしている。この観点から本年度はおもに法文学部を中心にその校風形成や学生思潮を把捉するべく検証を進めてきた。前年度の研究に引き続き、予科開校期および本科開設期前後(1923年〜1927年)を主として京城帝大の校風形成の経緯を追い、同窓会誌や教員の回想録等と比較しながら分析している。研究期間の最終年度にあたる本年度は、予科開校期から本科開設期における京城帝大の動向と在朝鮮メディア報道の調査結果からその校風文化について以下の研究成果報告を行っている。「植民地の帝国大学-京城帝国大学と朝鮮半島の1920年代」(愛媛大学「資料学」研究会)。これに関しては2008年度夏に論文として公表することが決定している。その他には「植民地的知性とは何か-京城帝国大学と知の彷徨」(2008年度高麗大学校日本学研究センターコロキウム)においても報告を行っている。また、京城帝大本科開設期の教員・学生の動向を踏まえた校風文化の形成および1930年代における日本語文芸活動(1933〜1936年)に関しては、日本列島および朝鮮半島における新聞・雑誌の資料調査や学内文芸誌における文芸創作の分析・検証を踏まえ、研究成果公表の準備を順次進めている。
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