今年度は、中国東北地域、内モンゴル地域、新疆ウイグル自治区などにおける実態調査とそれの取りまとめに重点をおいた。2007年5月には内モンゴル自治区のフフホト市で清朝時代の綏遠八旗のうちのモンゴル八旗の子孫に対して二度目の調査を実施した。外藩モンゴルに囲まれていた綏遠八旗では、辛亥革命直後から蒙古旗人の人々のモンゴル共同体への合流が見られ、1950年代初期に集団でモンゴル民族への認定を求めていたことが分った。8月には新疆ウイグル自治区のイリ・カザク自治区州、ボルタラ・モンゴル自治州、ホブクサイル・モンゴル自治県を訪ね、1760年代に当時の盛京(現在の瀋陽)から新疆に派遣されたシボー人、ダグール人、エベンキ人やチャハル・モンゴル人らの子孫を調査した。新疆というトルコ系とモンゴル系を中心とした複雑な多民族社会で彼等は満族への合流を意識せずに、1950年代以後に中国で定められたそれぞれの民族の枠組みへ順調に帰属することになった。 2008年2月中末から3月のはじめにかけて遼寧省の大連を中心とする遼東半島地域で実態調査を実施した。大連市金州区、瓦房店市、蓋州市には康煕31年黒竜江地域から移住させられてきたバルガ・モンゴル人の子孫が多く暮らしており、彼のほとんどは自らの民族的出自を記憶しつづも現在は満族として登録していることがわかった。これは本テーマの主な目的であった旗人の民族的帰属意識を明確にするための重要な発見である。研究成果は現在「中国東北三省のモンゴル世界」としてまとめ、2008年度に公表を予定している。
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