本研究では、(1)日本語と中国語の対面相互行為(ビデオを見てその内容を見ていない相手に語る・青空市場や商店街のサービス場面など)の言語・非言語を実証的に分析し、対面相互行為の参与者は、どのようにして瞬時に変化していくコンテクストや意味を把握するのかにっいて調査している。 本年度は、日本(沖縄と東京)と中国(上海)でのフィールドワークを開始し、ジェスチャーを含めた日常の言語・非言語相互行為データの収集作業を中心に研究を行った。まず、東京と沖縄の大学生からナラティブデータの収集と分析を行い、その結果を2007年6月に太平洋学術会議で研究発表する。次に、日中それぞれサービス場面(青空市場と商店街)や地域の人々の日常のやりとりでの対面相互行為をビデオデータとして収めた。本年度は、中国語データの収集に必要な参与者を集めたり、フィールドワーク先での関係を築くことを最優先とし、来年度以降スムースに研究を進めるのに不可欠なネットワークを得た。今後は、収集したデータの書き起こしを進めていくと同時にデータを増やしたい。さらに、沖縄県石垣島では空間環境認識に関する言語・非言語データの収集と分析を開始した。その結果、石垣島出身の話者が空間を示すときには、東西南北の軸に基づく『絶対指示枠』を使ったジェスチャーが言語とともに正確に現れる傾向が強く見られた。これは、現代の日本語での空間認知が左右を軸とする自己中心的な『相対指示枠』であるという通説とは異なる。今後は、石垣島だけでなく中国においても空間認知に見られる言語・ジェスチャーデータを収集し、分析することで、ある地域社会での言語使用や相互行為がいかにその地域の環境や文化、世界観ともかかわるものであるかを考察していく予定である。
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