本研究は、日・中の日常生活場面での対面相互行為に出てくる言語やジェスチャーが、いかに人々の暮らす地域社会や地理的また文化的な環境とかかわっているのか論じていくことを目的としている。今年度は、データ収集のフィールドワークと昨年度収集したデータの書き起こしや分析を行った。 日本語データに関しては、昨年度に引き続き、沖縄県石垣島でのフィールドワークを行い、インタビューやアンケートによるデータ収集を試みた。さらに、本州でのデータを加えていくために、京都市内でのフィールドワークも短期間ながら実施し、空間把握や空間表現に関するデータ収集につとめた。中国語のデータに関しては、昨年度に録画したものの未使用であった大量なビデオデータの書き起こしと分析を相当な時間をかけて行った。中国に暮らす日本語母語話者と英語母語話者が中国語で会話をした接触場面では、それぞれの母語の影響を受けた言語使用(あいづち、終助詞)が中国語にも転用され、上級中国語話者であるにもかかわらず行き違いとなるやりとりが多く見られたことを考察した。また、ジェスチャーについてのメモ取りも同時に始めたが、ネイティブスピーカーの協力を得ることが期待していたより難しく、書き起こしメモに多くを取り入れることがかなり困難な作業であった。この点は、詳細で重層的な言語とジェスチャー分析に重要となるので、言語使用とジェスチャーのシンクロニーに少しでも迫るべく今後も時間をかけて進めていきたい。 本年度の研究成果は、石垣島での空間認知にかかわる言語とジェスチャーの使用の関係を考察した論文としてまとめた。それと比較した京都の空間認知にかかわる言語使用についての論文は、来年度の学会発表に向けてまとめている。また、中国での日本語話者と英語話者の接触場面でのやりとりについての論文も来年度の学会発表に向けてまとめている。
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