本年度は、研究対象地域を埼玉県入間郡所沢地域に設定して、埼玉軍政部や所沢基地に進駐した米軍部隊に関する占領軍側の史料の調査・収集・整理、および地域社会側の史料の収集・整理をおこなった。 第1に、米国国立公文書館において、埼玉県に進駐した米軍実戦部隊の史料を調査・収集した。おもに、第97歩兵師団(97th Infantry Division)、第43建設工作大隊(43rd Engineer Construction Battalion)の史料を収集した。しかし、収集した史料は、部隊内部に関する記述がほとんどで、基地周辺の地域社会に関する情報は非常に少なかった。 第2に、埼玉軍政部関係の史料を収集した。この史料は、GHQ/SCAP資料として国立国会図書館憲政資料室にマイクロフィッシュで所蔵されている。占領軍は、地域社会のどのような問題に関心をもち、対応していたのかを示す史料として、とくに埼玉軍政部の活動月例報告書を中心に収集した。 第3に、地域社会側の史料として、占領期の所沢基地周辺で、活発に社会運動に取り組んだ日本共産党所沢細胞や、所沢共同闘争委員会の機関誌類(『所沢新聞』、『平和の力』など)を収集し分析した。さらに、占領後半期の日本共産党埼玉県委員会や埼玉西部地区委員会に関する史料を含む「大島慶一郎関係資料」を整理し、目録を作成した。当該期の地域の共産党に関係する史料は、これまでほとんど発掘されておらず、占領期の地域社会における運動を検討するうえで、重要な史料である。 来年度は、収集した占領軍・地域社会の両側の史料を利用して、とくに朝鮮戦争勃発前後の米軍基地をめぐる地域社会運動を具体的に分析する予定である。
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